Paradise Jack
酒が好きで、気まぐれで、洒落っ気もない。本当に、この女があの作品達を書いているなんて信じられない。
…いつか、小林秀宇の世界で演じたいと、ずっと望んでいたけれど。
どうやらそれも叶わないようだし。
「がっかりだよ」
ぽつりと呟いたそれは誰に届くこともなかったので、俺の独り言になった。
うつぶせたまま、くうくうと規則正しい寝息を立てるシュウをゆさゆさと揺すれば、重そうな瞼をやっとのことで持ち上げたシュウの瞳に俺が映った。
「…ふふふ」
「何がおかしいんだ」
「やっぱり、怜ちゃんは美人さんだね。次の作品は、あなたみたいなオリエンタリックな美女をメインにもってこようかな」
「そりゃどーも」
のそりと身体を起こしたシュウの細い手が、そっと俺の頬に当てられてドキリとする。その色白の指は雪のように冷たく見えていたのに、触れれば燃えるように熱いのだ。