Paradise Jack
生い茂る新緑の隙間から、澄んだ濃紺の空が覗いていた。
桜海町は小さな町だが、特別田舎と言うわけではないはずなのに、どういうわけかよく星が見える。
夜明けまで数時間。
光の粒が散らばるそれに、ゆっくりと目を細めた。
アパルトマンへと続く長い坂道を千鳥足のシュウを引っ張りながらようやく上り終えて、再びシュウの身体を揺らす。
「…おい、シュウ。部屋ついたぜ。さっさと鍵開けて部屋入って寝ろよ」
「…うん、気持ち悪い…」
「おまえ、マジでどんだけ飲んだんだよ(…最後にテキーラ勧めたの俺だけど…)」
シュウは、ガサガサと鞄の中をかきまわして、小さな鈴のついた鍵を取り出す。そして、明らかに視線の定まらない様子で、それを鍵穴へと向けた。カツンカツンと金属があたる音だけが響いて、一向に刺さる気配はない。
思わず溜息をついた。