Paradise Jack

「"大丈夫”よ、怜ちゃん」

「なんのことだよ」

「なんでも。あ、言っておくけど適当じゃないよ、これは確信。ずっとこの部屋から色々なひとを見送ってきたんだもの」

「心配なんて、・・・してねえよ」


どうして、俺はいつもこんな風にしか返せないのだろう。内心酷く呆れて、こっそり溜息をつく。

けれど、シュウは特段気にすることもなく、のんびりとした調子だ。


「・・・・・・シュウは、外の世界を見ようとは思わないの?」

「まさか、そんなこと。わたしは、好きなものに囲まれてるこの部屋がパラダイスだから。欲張るのは疲れるし」

「ふうん。勿体無い。この小さな町じゃ見られないものがいろいろあるのに」

「・・・例えば?」


興味津々と言った様子で問われるのに、俺は「そうだな」と口を濁す。

たとえば、・・・東リヴィエラ、ラスベガス、モンテカルロにバーデンバーデン。それまで撮影で行ったことのある土地を口にした。

それぞれに美しかった場所には思い入れもあったけれど、語彙力の乏しい自分にはそれをうまく彼女に説明してやることは出来なかった。

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