Paradise Jack
「…あれ、まだ残っていたのか。お疲れさま」
「お疲れさまです、木本さん」
木本さんは、人の良さそうな笑みを浮かべながらとなりのベンチへと腰掛ける。
シンと静まり返った屋上で、不意に木本さんがこちらを振り向く。
「そういえば・・・また、実写化の話断ったんだって?」
柔和に細められた瞳の奥に、確かに見えるのは非難の色だ。
数人の作家を担当しているけれど、それがシュウのことを言っているのだと勿論分かった。
「ええ、はい。小林先生も、望まれないことですし」
「まだ、そんなことを言っているの。相変わらずだね」
・・・・・・。
嫌な沈黙・・・。
不愉快に思っているのを隠しもせずに、眉を寄せながら俺を見つめる。
そして、呆れた様子で溜息をついた。