Paradise Jack
「…これは、昨日今日で出た話じゃないんだよ、蒼井君」
「編集長、お考えは承知しています。ですが、こればかりは小林先生の了解も得ないことには…、」
「だから、木本君に先生の説得をお願いしたいんじゃないか。君がそうやっていつまでも状況に甘んじているから」
グッと押し黙ると、編集長は困ったように息を吐く。
幾度となく、こういった話を断ってここまできたけれど、ついに上も本格的にマーケット展開を視野に入れ始めたのだ。
おそらく、木本さんの意見も大きく影響しているに違いない。
ここまで強気な姿勢を貫くのは。
「先生に、ご連絡してみますが」
「頼むよ。いいかい?まずは、もうひとり担当がつくとだけ言っておけばいい。信頼関係を築きながら、徐々に話を切り出すほうがいいだろう」
"君に掛かってるよ"
編集長の言葉を前に、俺は自然と拳を強く握り締めていた。