Paradise Jack

彼も忙しい男だな。

敏腕編集者として、担当作家を何人か抱えるのに加えて、他社の人間とのアポイントに非公開の予定、スケジュールは殆ど全てが埋まってしまっている。

―今日の、午後くらいしかスケジュール合わないじゃないか。


「木本さんと外出か?」

「……小林先生と面会です」

「っげ!まじで!ついに、小林先生に木本さん導入かあ。いよいよ、利益路線で行くんだな、うちも…。てか、お前はそれが原因か?小林先生は静香がずっとひとりで育てたようなもんだしな」

「馬鹿馬鹿しい。そんな子供染みた独占欲、この社会で通じるわけないでしょう…、いつかこうなることくらい予想は出来てましたよ。俺は、ただ…」


そこまで勢いで話して、我に返り口を噤んだ。
橘相手に、何を俺はベラベラと喋っているんだか。

予想、出来ていた。

秀宇以外にも、ようやく安定した部数を売れる作家が育ち始めたり、万年初版止まりだった作家も重版がかかるようになったりと、少しずつ星とヒバリは安定してきている。


これは、以前から小林秀宇に目を掛けていた社長の賭けだ。
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