Paradise Jack
頑なに自身の作品を本に留めてきたシュウは、木本さんの話を聞いて何を思うんだろう。そして、俺をどんな目で見るのか。
そんなことを想像しては、こんなにも怖がる。
編集者失格だな、俺は。
作家と編集者という境界線が曖昧になっている。
先生の作品を愛しているし、それと同じくらい小林シュウという人間がとても好きなのだ。
だから、守りたかったのに。
「…あまり、小林先生の意に沿わないことを申し出て、先生がうちに原稿を寄越さなくなったらそれこそ大打撃だな」
「木本さんなら、それが出来ると踏んだんでしょうね」
「凄い決断だぜ。まったく」
橘は肩を竦めて、ようやく口を閉じて彼が今担当している現役女子高生作家の原稿に赤入れを始めた。