Paradise Jack
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12回目のコールでようやく電話が繋がった。
昔から、どうしてかシュウはなかなか電話に出ようとしないのだ。
『――もしもーし…、』
「シュウ、俺です。蒼井…」
『知っているよ、ディスプレイに出ているんだから。どうしたの?打ち合わせなら明後日に予定してるでしょう』
いつもと変わらない、のんびりとした口調で問うシュウに用件を言いあぐねてしまう。
『静香?』
「…唐突ですみません。今日の午後、少しお時間頂けませんか?仕事のことで、シュウに紹介したい人がいるんです」
『……本当に唐突だね、何かあったの。これまで、わたしはそういう話を全部断ってきたと思うんだけど』
一瞬の沈黙の後、一気にマイナス5℃は冷えた声音でシュウが答えた。