Paradise Jack

ハッとして、声のするほうを振り向けば、人垣はぱっくりとふたつに別れていて、その中心にはブロンドの女がニッコリと笑ってこちらを見つめていた。

すらりと背が高く、なかなかの美人。

けれど、女が周囲からの注目を集めていたのは、決してその整った容貌のせいではなかった。


右手にボウイナイフ、そして左手にエキストラの子供を抱えていたのだ。


『…なんだ、あの女。ありゃ演出か何かか?』


ラリーは、目を見開いて問う。俺が知るわけないだろ。けれど、子供は顔を真っ赤にさせて泣き叫んでいるし、周囲は距離をとりながら、慌てて電話(おそらく警察にだろう)をしたりしている。

この状況じゃ、ガードマンも手が出せない。


『レイジ!』


わずか5メートルの距離で、彼女は俺の名前を呼んだ。


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