Paradise Jack
一歩、また一歩と女が近づいてくる。
今、少しでも抵抗をすれば、この女は一寸の躊躇いもなく子供の命を奪うのだろう。それくらい、温度のない笑みには狂気が満ちていた。
彼女は、熱狂的なファンだ。常識的なラインをとうに越している。
『随分、我慢したのよ。ずっとずっとずっと、耐えていたのだけれど。でもね、やっぱり無理なの。貴方が、私以外の誰かとキスするの、もう見ていられない』
『…っ!』
周りからすればほんの一瞬の出来事だったのだろう。
けれどそのとき、俺の目には随分とスローモーションに映っていた。まるでほんとうに、映画のワンシーンを見ているように。
『レイジ!!』
誰の叫び声だろうか。
地面に、まるでモノのように叩きつけられた子供。ブロンド。目を焼くような照明の光。