Paradise Jack
「もしもし、」
『静香!鍋をやるの。ふたりじゃとても食べきれないし、今からうちに来てよ』
「…は?鍋?いまは5月ですけど」
『いつ食べても美味いのが鍋だろう』
俺の返事を待たずに、ぶつりと電話が切れた。
いきなりのことでいまいち状況が把握しきれないのだけれど。
「ふたりって、言ってたよな…」
芹生は、深夜はロッカバラッドで働いているはずだ。
「……桐生怜二?」
一時停止で画面に映る、整った相貌を見つめ、俺は小さく首を傾げた。