Paradise Jack
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淡いオレンジ色の光が灯る外灯が、アパルトマンに続く長い坂道を柔らかく照らしている。
豊かな木々の先に、ぽつんと建つアパルトマンには、桐生怜二が引っ越してきたことですべての窓が光で埋まっていた。
昇りなれた階段をあがると、がちゃりとタイミングよく扉が開いた。
「…!」
「あ、おまえ」
ブルネットのロングヘアがさらりと零れ落ちて、分厚い黒縁メガネの奥で、形のよい瞳が大きく見開かれた。
一瞬、この美女が何者か分からなかった。
「ああ…そうでした、桐生さん、」
「呼び捨てでいいよ」
先ほど、スクリーンの中にいた人間が、(女装しているとはいえ)いきなり目の前に現れるというのは、随分不思議な心地だ。