Paradise Jack
「私が演じられないものなんてないわよ」
「…流石に、正体知ってるし。気持ち悪いからやめてください」
「贅沢なヤツだな。俺の演技を生で見たいって言う人間なら、山ほどいるってのに」
小さく肩を竦め、桐生は紙袋を左手に抱えながらインターホンを押す。
暫らくして、なぜか頭にサングラスを乗せたシュウが満面の笑みで現れた。隙間からは、醤油ダシの良い香りが鼻をくすぐる。
「シュウの手料理を頂くのは久し振りです。けれど、なぜ急に鍋なんですか」
「ちょっと、食材買いすぎちゃってねぇ。ほんとは桐生の部屋でやろうと思ってたんだけど、鍋もなんにもないからさあ」