Paradise Jack


部屋へあがると、しきりにきょろきょろと視線を動かしている桐生に気がついた。そうか、桐生は彼女のファンなのだ。

部屋は慌てて片付けた様子だけれど、原稿と愛用の万年筆だけはしっかりと鍵のついたガラス棚に入れられている。


「どうですか?ここが、小林秀宇の仕事場ですよ」


笑って声を掛けると、桐生はハッとしたように顔を赤らめ、すぐに嫌そうな表情をつくって俺を睨んだ。


スクリーンや雑誌で見る桐生怜二は、いつもクールで、常にミステリアスな雰囲気を纏っているのに。随分と印象が異なるようだ。
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