Paradise Jack

桐生は、煮立った具を小皿に取り分け、おそるおそる口に入れる。

どうやら、シュウが料理が出来るということを、信じきれていないらしい。


「!」

「お味はどうですか?」

「…美味い」

「でしょ。味は、芹生のお墨付きだし。あ、芹生ってあのバーテンダーの子ね。料理が凄く上手いのよ」

「ふーん」


ブルネットの髪が目元を隠して、桐生の表情を窺うことは出来ない。ただ、気のない返事をしつつウィスキーを咽喉に流し込み、箸を運ぶというのを繰り返している。


「怜」


ぽつりと、シュウが言ったのに、桐生は伏せていた顔をゆっくりとあげた。シュウがにこりと笑う。
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