Paradise Jack
「怜、ならバレないでしょう。何がいいかずっと考えてた。桐生が嫌じゃないなら、そう呼ぶ」
「…ああ、いいですね。怜なら女性の名前としても問題ない。ここで暫らく身を潜めるなら何か名前があるほうがいいですし」
シュウは、空になったグラスにもう一度、琥珀色を並々と注いで、にんまりと笑った。
「改めて、よろしくね。怜」
つられるように、俺達もグラスを掲げる。二度目の乾杯でカツンと縁を当てれば、水面がゆらゆらと光を孕んで揺れるのが綺麗だった。
桐生、もとい、怜は、気恥ずかしさを隠すように無言のままグラスに口をつけている。
「ほんとうに、変な女」
ぽつり呟かれた声が聞こえた。