Paradise Jack
怜は、まだ半分も長さの残った煙草を外に設置してある灰皿へと押し付け、コンビニへと入る。
店内には他に客はおらず、中年の店主ひとりだけだった。
「いらっしゃい……、っ!」
気だるそうな声音で挨拶をした後、息を呑む音が聞こえるようだった。
この小さな町には不釣合いな、高身長の美女が突如現れたのだから、そういう反応にもなるのだろう。
人を惹きつけるオーラというのは、性別を誤魔化したくらいでは隠れるものではないのか。改めて、納得してしまう。
―…けれど、こんな調子でいつまで隠れていられるんだろう。これだけ目立つヒトだ。何かの拍子で、居場所を突き止められてしまいそうだな。
店主の目は、コンビニで品物を見定めている怜をずっと追い続けている。
缶ビール数本と焼酎のボトル、それに煙草を2箱頼んでカゴをレジへと出した。
「お嬢さん、見かけない顔だね」
「引っ越してきたばかりだから」
「へえ、知り合いはいるのかい?もしよければ、今度案内するけど」