Paradise Jack
怜は、驚いた顔をした。
「…あいつが?」
「そうです。以前、たった一度ですが、彼女に相談したことがありました。三作目、ストレートな純愛物で、映画化のオファーが来ていたんです。当時人気だった役者を何人もキャスティングして、予算もたっぷりかける一大プロジェクトにしたいとね、」
流石に、社長にも頭を下げられ、俺は小林秀宇にそのことを話した。
けれど、案の定というか、彼女は決して首を縦に振らなかったのだ。
『自由であるべきである想像を型にはめる、小説の映像化というものは嫌い。だから、そういった仕事は受けないの』
そのときのシュウの、酷く冷めた瞳はとても印象的だった。
以来、その手の話は全て断るようにしている。
上司や役員達はいい顔をしないが、無理強いをして彼女を失うリスクを考えれば諦めざるを得ないのだろう。
俺としては、どちらでもいい話なのだけれど。