ただ好きなだけ
同じ大学に入ったのに、健吾はあまり大学には顔を出せなくなって、1年も経たない間に大学を辞めてしまった。


今は、仕事に集中したい。


思い描いていたキャンパスライフを送ることもできないまま、私の夢のキャンパスライフは夢のままで終わってしまった。


そんなに夢中になれる仕事に出会えたこと。
仕事が順調なこと。


それは、きっと健吾の幸せなのに。
私はやっぱり考える。
あの時、スカウトマンに出会わなければ?
あの時、私が背中を押さなければ?
あの時、私が「辞めて」と言っておけば?


きっと、違う未来があったのに…って。


一緒に同じ授業を受けて、
旅行に行ったり、
同じ時間をたくさん共有して、
笑って、泣いて、抱きしめあって、
何気ない毎日を送るの。
誰よりも健吾に近い場所で。
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