ただ好きなだけ

突然の…



未「ちょっと、ごめん……」


愛李と賢治にそう言って、私は一端席を外した。
愛李は、健吾に夢中で、私の声は聞こえていなかったみたい。
なのに、賢治はしっかり聞こえていて


賢「……大丈夫?」


そう優しく問いかけてくれた。
こんな気遣いのできる賢治に私は、必死に笑うことしか出来なかった。
だって、何か他に言葉を発したら、
私の不安は、言葉となり、涙となり、溢れ出しただろうから…。

健吾がいくら私をどう思っているのか、
不安になったって、
私は健吾が好きだから…
この秘密の恋を守るんだ……。
だから、私の中に溜まってる不安は外に出してはいけない…。


私は、逃げるように席を外した。


賢治の優しさからも。
会場にいる多くのライバルからも。
今は遠くて手の届かない健吾からも。
感じたくない現実からも。
全てのものから。
私は逃げ出した……。


そして、私は溜め込んだ不安を涙に乗せてトイレで涙を流した……。


大好きで、大好きで堪らないよ?
でもね、この先、この気持ちが収まる場所はあるのかな?
幸せな場所は……。
その疑問が拭われる日は、訪れる?


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