ただ好きなだけ


ひとしきり泣いた私。
そんな私の頭を撫で続けた賢治。

二人の間には、会話が無くて、冷静になってみれば、妙に恥ずかしくて……。

もう、大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、私は、口角をキュッと上げて、賢治に視線を向けた。


未「いきなり、ごめんね?もう、大丈夫だから」


そう言うと、賢治は「……そっか」とだけ言葉を残して、撫で続けていてくれた賢治を手は私の頭からそっと離れた。


未「戻ろっか?」


そう賢治に声をかけて、会場に戻ろうとした時だった。


未「……賢治?どうしたの?」


賢治が私の腕を引き、戻ることを阻止する。
いつも元気な賢治が、いつに無く真剣な顔をして、私の瞳を視線が捉える。


賢「未愛?」


未「ん?」


賢「今、幸せ?」
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