ただ好きなだけ


賢「ごめん、だけは聞かない」


そう私に言った賢治。
それは、ごめんの理由を、賢治を振る理由を言えって事?


大勢の健吾のファンに出会って
何だか遠くにいるような健吾を見て
不安や孤独に襲われて
友達だと思ってた賢治に告白されて
ましてやキスまでされて
混乱してる私の頭では、何て答えたらいいのかも分からなくて。


賢「強引で、ごめん。でも分かって。俺だって必死なの」


そう言った賢治は、少し申し訳ないような表情をして、小さく笑った。


賢「付き合いたいとかじゃないんだ……。いや、付き合えたら万々歳だけど、未愛に笑ってて欲しいだけなんだ」


賢治は私をそっと抱き締めた。
モテるのに、いきなり告白しちゃうし、キスだってしちゃうのに
賢治の鼓動は、尋常じゃないほど速かった。


賢「笑わせるからさ、幸せにするから、友達だからって理由だけで、俺を振るのだけはやめてよ」


今まで告白された時に
『恋をする気分じゃない』って言ってた決まり文句はもう使えなくて。
だからって『彼氏いる』なんて本当のことも言えなくて。
『友達だから』って理由は、もちろん言えなくて。


賢「俺にチャンス頂戴?」


こんな私のことを、こんなにも思ってくれてる賢治。
こんな賢治だから、傷つけたくなくて。


私が言葉を失っていると……



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