ただ好きなだけ
プチッと切られた電話。
私は、愛李と賢治に「用事が出来た」それだけを伝えて、健吾のもとに走って行った。


あんな大勢いた人の中から私を見つけてくれた。
そうだよね?
ライブに行くことも知らなかったはずだし。


久しぶりの私だけに向けられて健吾の声。
健吾からの着信。
健吾からのお誘い。
健吾に会える。


それが嬉しかった……。


私だけが特別なんだって思えたんだ……。


私は舞い上がってたよ。
100メートル走したら、きっと今までで一番いい記録がでるんじゃないかってくらい、そうスピードで、楽屋に向かった。


でも、この時の私は、あんな気持ちになるなんて、想像もしてなかってんだ……。
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