ただ好きなだけ
「だから、ここから先はファンの子は禁止なの!!」
あれから、走って健吾の元に行こうとしたはいいものの、入り口で、もちろん私みたいな一般人がすんなり中に入れてもらえるわけもなく……
未「いや、ファンじゃなくて……、いや、ファンでもあるんですけど…」
健吾の恋人です!!なんて宣言したって聞いてもくれないだろうし…
「よくいるんだよね?知人になりすます子」
未「いや、私は健吾に呼ばれて」
そうは言ってみるけど、警備のおじさんが信じてくれるはずもなく
「帰りな?悪い事は言わないから」
そう言って、私を追い出そうとする。
でも、私だって簡単には引き下がれないよ。
だって久々の健吾からの呼び出しだもん。
何が何でも健吾に会いたいんだ。
未「だから、ただファンじゃない「ごめん!!」
私の言葉を遮ったのは、私の大好きな声だった。
振り返ると、ライブ終わりの健吾の姿があって
健「こいつ、俺が呼んだの」
そう言って私の肩を抱いた健吾。
たったそれだけで、私の胸はドキドキと音を立てる。
警備のおじさんが「すみませんでした」と頭を下げたのに、健吾は「こいつ、俺の彼女だから、覚えといてね?」なんて言ったんだ。
その言葉に心臓はもう破裂しちゃうんじゃないかってくらい物凄いスピードで鼓動を刻む。
健吾の言葉に驚いた警備のおじさんを残し、健吾と私は楽屋に向かう。