ただ好きなだけ
未「健吾、妹って恋愛対象じゃないんだよ?」


そう言うと健吾は、私と向き合い、私に視線を絡ませた。
あの日、喧嘩した日以来だね。
こうやって、目を合わせたの。
もっと早く目を合わせていられたら、何か変わったのかな?


でも、そんなの不可能だね。
だって、健吾は橘健吾だもん。
引く手数多の人気者。
早く目を合わせることなんて出来なかった。


健「未愛、あれは」


私ね、健吾が好きだった。
『未愛』そう健吾に言われる未愛が一番好きだった。
親友に言えない恋でも。
友達の告白を踏みにじるような恋でも。
健吾を好きだった。


未「健吾、もう疲れちゃった」


きっと、私のことをあの女の人に問い詰められたんだよね。
きっと、咄嗟についた嘘だよね?妹だって言ったのは。
だって健吾は今、私を追いかけて来てくれたもん。
きっと、あの女の人に私のことを問い詰められて、彼女じゃないって言ったって、私はその事実を知れば、悲しんだんだ。
でも、今はさ、健吾が“妹”って言ったことを理由にさせて?
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