Natural
毅はすぐに美紗子に追いつき美紗子の腕を掴んだ。

その瞬間美紗子は振り返り、涙を流した目で毅を見た。

毅『どうした!いきなり・・』

そう言う毅に美紗子はずっと首をふり続けた。

言えないとばかりに。

その時、毅の頭にフッと浮かんだのはもしかしたら何か思い出したのかもしれないということだった。

毅『なにか、思い出した?』

そう言うと美紗子は止まった。

”なにを思い出したんだろう・・元彼かな?”

そう思いながらも口に出すとまたつらいだろうから

毅『言わなくていい。過去のことすべて忘れたらいい。何があったとしても一緒にずっといてやるからもう過去は思い返すな。』

そう言って美紗子を抱きしめた。

通って行く人々がみんな振り返って見ていた。

時には立ち止まって見る人も。

そんな中何も言わず黙っている美紗子に

毅『今、またいなくなると次は俺も壊れるよ。また消えようとしてるの?そのときはもう俺を殺して行って。待つのはもういやだ。』

そう言った。

その毅に美紗子は下を向いたまま抱かれていた。

”わたし、汚い・・”

そう思いながら。
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