Natural
そのとき誰かが美紗子を持ち上げどんどん岸に向かって歩いていった。

美紗子はビックリして横を見るとサーフウェアを着た男から抱えられているのがわかった。

美『離して!!お願い!!やめて!!!』

そう言うが男は無視して砂浜に向かった。

そして砂浜にドサッと降ろされて

『何考えとっとや!!命粗末にすんなよ!!』

九州弁でそう怒鳴った。

美『何も知らないくせに。』

そう呟くとその男は転げている美紗子の襟首をつかんで

『何があったか知らんし知る気もない。だけど死んでなにがある?逃げんなよ!!』

”逃げたんじゃない。ただみんなのところに行きたいだけ。”

だがそういう考え方を普通の人は理解するわけがなかった。

美『わたしはただ・・愛して愛されただけだもん。なのにみんないなくなっちゃって・・』

そう言って泣き出す美紗子の前に男はしゃがみこみ、

『後追い自殺なんてしてないでまた幸せさがせよ。お前まだ若いんだろ?』

そう優しく言った。

美『わたし・・誰もいない。独りだもん。もう生きてても楽しくない・・』

『なんでそう言い切れる?未来が見えんのか?』

その言葉に美紗子はつまってしまった。

『とりあえずあそこ、家だから来いよ。姉ちゃんいるから服とかそういうの貸してくれるし話し相手にもなるだろ。』

そう言って美紗子たちの位置から見えている小さなアパートを指差しながら言った。

美紗子はまだ砂浜に座っていたが男が早く。と言って腕を掴んだので立った。
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