バニラエッセンス
「おぅ」
ハルトはびっくりしながらも、そっと私の背中に手を回した。
そして、「ありがと」と言いながら、ポンポンと私の肩を叩いた。
「それって神の悪戯かな?」
「何が?」
「その、ハルトの、能力…」
「そうかもな。生まれつきだし」
「じゃあ、それを疎ましいと思ったことない?」
「あるよ」
「死にたいと思ったこと、ない?」
「あるよ」
「でも、今生きてるじゃん」
すると私の言葉の棘を抜くように、ハルトはそっと立ち上がった。
「俺は君を救うために、生きてきたんだ」