SSシリーズ
上手な起こし方
「…ねぇ、」
「、」
「おきてってば、」
「……ん゛ー。」
「仕事、遅れる、」
「あと5分…」
「だめだってば、ちょ…っと!」
ある冬の午前7時前5分。
もぞもぞと、隣で身をよじる昂(コウ)を、必死で起こそうと奮闘するあたしの努力は虚しくも散っていく。
「きゃ、」
短く小さな悲鳴をあげたあたしはまた、昂の腕の中に納まってしまった。
「…もう、昂!!?」
「…菜々なんかいいにおいする…。」
「変なこと言わないで、」
「俺と同じにおい…」
そう言った昂にきゅう、と抱きしめられた。
……動けない。
横で、ケータイのアラームが規則正しい音で、振動を伝えてくる。
「もう7時だよ、」
「昨日が激しかったから、今日動けない。」
「なっ…!」