SSシリーズ
あんな奴やめとけよ。
彼女はきっと。
純粋にアイツが好きなだけ。
静かな面もちで奴とすれ違った。
なんだよ、泣かせんなよ、
ぎり、とかみ殺した言葉は教室の前の閉ざされた扉の前でため息と共に吐き出した。
「みーちゃった、」
ガラリ、教室のドアを容赦なくあけた。
勿論閉めることもちゃーんと忘れずに。
小さな背を向ける彼女は、びくりと肩をふるわせた。
「…柳川、」
「お前って、下野が好きなわけ」
「…、」
彼女から数メートル離れた机にがったん、と腰掛け、背を向けたままの彼女に問う。
「…下野はセンコーだろ」
「っ、わかってる…!」
「わかってねーよ」
「…わかってるってば!優くんのことは私が一番よく知ってるんだもん…!」
振り向いた彼女は泣きはらした目をまた、こする、
彼女は癇癪をおこすように叫ぶ。
叫ぶ。
「…下野の何がいいんだよ、」
「…柳川に、何がわかるの?!ねえ、好きでいちゃ駄目なの?!なんで?なんでみんな駄目って言うの?ねえ、……」
「……わかるよ」
だって、
(お前のこと、ずっと見てたから)
「あんな奴、やめとけよ。」
するりとこぼれた言葉と、彼女を引き寄せたのは同時。
一方通行は俺も同じ。
彼もまた、純粋に彼女が好きなだけなのです。