光の子
事情を知らない沙与が帰宅したことで、
一人興奮していた美鈴は、さっさと部屋に引っ込んでしまった。
美鈴に責められて困惑した矢楚は、沙与の部屋を訪ねてことのしだいを話した。
沙与は、
「あー、なるほどね〜」
と矢楚には気の抜けるような相づちをしながら、
鞄から参考書と問題集を出し勉強机に置いた。
そうして、椅子を回して真後ろのベッドに腰掛ける弟に向き直った。
「まぁ、美鈴も言うだけ言って気が済んだろうし。
女は泣いたあとはスッキリするからさ。
矢楚は気にしなくていいよ、間違ってないし」
沙与は、口元をゆるめてわずかに微笑んで見せた。
医大の受験勉強に酷使している目が充血している。
そう言われても、美鈴に不満をぶちまけられた矢楚の戸惑いは晴れない。
「正しければ、それでいいのかな」
知らず、人を傷つけても。