光の子
すると、沙与は急に真面目な顔をして、つぶやいた。
「コンプレックスなら、私は四才の頃からあるよ」
沙与は目を伏せて、思いを巡らしている。
「妹が、リカちゃん人形みたいに可愛いくなっていくのを、傍で見てたから」
伏せた目を上げて、矢楚をみると、おどけた顔をして言った。
「顔も性格も天使みたいな弟が生まれた頃には、
逆に吹っ切れて、
勉強に励むことに決めたんだから」
美鈴と矢楚は、アルゼンチン人クォーターの父に似て華やかな顔立ちだが、
沙与は母に似て、造りが淡白だ。
それゆえ幼い頃は地味な印象だったが、
小学校も高学年になると、培った知性や秀でたリーダーシップに研かれて、
沙与の外見は人を惹き付けるなにかしらの魅力を纏うようになった。
「誰しも、思い描いたようにいかなくて、苦しむことは、あるから」
そうだ、と矢楚も思った。最近は、うまくいかなくてもどかしくて。
そんなことのほうが、多い。