光の子





病院には、バスに乗れば十五分くらいで着いた。


広香は救急外来の受け付けで、
深夜に担ぎ込まれた矢楚の母はEC(緊急治療室)で処置を受けたあと、


今朝、入院病棟へ移動したと説明された。



よかった。


ひとまずは、安堵した。
入院病棟に移れたのなら、命に別状がないはずだ。



看護士に、
藤川さんは5階へ行きましたよ、ナースセンターで病室を尋ねてね、


と言われ、


広香は、エレベーターに向かった。



そのとき、ふいに、
急に押し掛けるなんて、あまりに不躾ではないかと、不安に襲われた。


第一、初対面なのだ。


広香と矢楚は付き合っているとはいえ、互いの家族にあいさつをするほど、

大人びた付き合いができているわけでもなかった。


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