光の子
母は、
そうだったの、と一言いっただけで、
おみやげのパンを皿に並べ、紅茶を煎れてくれた。
「お母さん、怒らないの?」
母は、そうね、とつぶやきながら、クロワッサンをちぎると、口に入れた。
「もったいないことしたな、とは思うわよ。
修学旅行って、今しかできないことの、典型じゃない」
「うん」
「でもね、頭にきてるかって言われたら、そうじゃないの。
むしろね、怖くなった」
「怖くなった?」
「好きになった人のために、突っ走っていくとこ、私から遺伝したのかしら、って」
広香は、はっとした。