光の子
広香の心の揺らぎに、母は気付いている。
母の柔らかな笑みがそれを語っていた。
「気ままに生きた過去は変えられない。
でも、せめて同じ女性として、娘に恥ずかしくない生き方を見せたかったの。
だから、健人さんとのことを終わりにした」
母は軽く息を吸うと、芝居がかった様子で両手を机にどん、と載せて軽やかな口調で言った。
「紅茶、煎れ直すわね。
次は、ミルクティーにしない?甘くして。
甘いものが、欲しくなっちゃった」
キッチンに立った母を眺めながら、
広香も、思いきり甘くして飲もう、とぼんやりと考えた。
ざっとでも、母の半生を聞いたわけだから、頭が、パンクしそうだった。
しかも、それを自分に話して聞かせる母の意図を勘ぐって、余計に聞き疲れてしまった。