光の子
矢楚は、広げた足に手を突いてフローリングを睨みながら言った。
「つまりは、父さんがどこへ出かけてるのかはっきりすれば、浮気かどうか分かるわけだ」
「友だちにお願いして、車を出してもらうの。
お父さんを尾行する」
「オレも、行くよ」
もし浮気だとはっきりしたら。
自分から離婚するよう父を説得することもできる。
なにも裁判なんかに持ち出さなくても、
父の良心に訴えてこの家を手放させることができるかもしれない。
「私は、行かない」
美鈴は、
少し思い詰めたような口調でぽつりと言った。
こんな現実、直視なんかしてたまるか、まるでそう言っているようだった。
沙与は黙って、美鈴の肩を抱き寄せた。