光の子
広香は矢楚の引退試合を、新しい旅立ちの日としてお祝いしたくて、プレゼントを用意した。
トマトみたいな赤い色のタオルに、『YASO』と刺繍をして、黄色いフェルトで『10』と小さくアップリケを入れた、そんなささやかなプレゼント、それに今朝焼いたサッカーボール型のクッキー。
ラッピングした袋は、母が服を買ったときのショップのビニールバックを使い回した。
それでも、お金のない広香には精一杯の贈り物だった。
きっと、矢楚なら。そこに私の真心がいっぱい詰まっていることを分かってくれる。
広香はクラブの敷地を、グランドめざして歩いた。