光の子
「広香、トイレは平気?私いま行ってきたよ」
「うん、だいじょうぶ、ありがと。木綿子、私、気押されちゃった。引退試合って、こんなに大がかりなんだね」
木綿子も、目を丸くして言った。
「ほんとだよ。サッカー部がいなきゃ、私たち試合見る場所も確保できなかったと思うよ」
今日は、中学の元サッカー部の皆も観戦に来ている。
気合い十分の彼らが、早めにきて場所取りをしてくれていた。
木綿子は広香の肩に手を回し、もう一方の手で、百メートルくらい離れた場所にいる男子学生の一群を指差した。
皆、一様にチアに釘づけだった。
「見て、知也のニヤけた顔。情けないったら。鼻の下を伸ばすっていうけどさ、あれ、ほんとなんだね~。伸びきってるよ、あいつら。広香、近くで見たら笑えるからね、楽しみにして」