光の子
広香と木綿子がすぐ近くまで来ても、知也たちは気付きもしない。
広香は声をかけた。
「知也」
「ふん?」
少し裏返った声でこちらを向いた知也の顔は、期待を裏切らなかった。
ぶぶ、っと広香は吹き出した。すぐ隣で、木綿子がため息をつく。
鼻のしたどころか。
「知也、口が開いてるよ」
広香がそう言うと、木綿子がバスケ部らしくすっと飛び上がり、ひょろりとした知也の頭をはたいた。
「すけべか!!」
「痛てっ」
知也が漏らした声に、周りの男子たちがかぶせてくる。
「はい、ナイッシュー」
「さすがは女バスの元キャプテンですね」
「手首のスナップが効いてましたね」
実況風に茶化したサッカー部の面々を、木綿子は一睨みで黙らせた。