光の子
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それは掃除時間に起きた。
広香がクラスの数人と、学校のゴミ置場前を竹ぼうきで掃いていると、
他のクラスのやんちゃな男子のグループがやってきた。
にやにや笑い、広香と同じ掃除班の女子を取り囲んだ。七、八人はいる。
「お前さあ、ユーレイ見えるんだって?」
囲まれた女子は、クラスでも浮いている不思議っ子で、
授業で理科室に行くと『ユーレイが見える』と言ってひどく怯えるので、
理科の時間は保健室で過ごしているのだった。
「ユーレイなんて嘘なんだろ、
お前さー、注目されたいだけだろ」
「ウソつき~」
細身のその女子は、身をすくめて「うそじゃ、ないよ」と小さく呟いた。
「ああ?聞こえないんですけど」
ニヤニヤ笑う男子の一人が、足元を蹴って少女に砂をかけた。
「おい、じゃあ、今から行こうぜ、理科室。証明しろよ」
彼らは少女の肩を押して、引き立てようとする。
「私も見えるよ!」
なぜそんなことを言ったのか、
広香は自分でも分からない。
「広香?」
近くにいた班の女子が広香の袖を引っ張った。
制止してくれたその子の思いやりも、広香には煩わしい。
胸が騒ぐ、腸(はらわた)が煮えくり返る。
耳が熱くなり、こめかみで脈打つ血潮を感じる。
少年らは一斉に広香のほうを見た。
「だれ、あれ?」
「あ、転校生だよ、あいつ」