光の子
矢楚が所属するユースは、J1リーグの中でも昨シーズン5位まで行ったブィットリアの下部チームで、
このユースでめざましい活躍をする者は、すぐにも引き抜かれてプロになれるといった具合だ。
矢楚は、中学卒業でこのU18のグループにあがったとき、二軍スタートも覚悟していた。
しかし思っていたほどには実力の差が無く、あっという間にFWのポジションを与えられた。
ブィットリアの監督を迎えて行なわれているこの練習試合でも、矢楚は冴えたプレーを見せている。
まわりはプロへのチャンスに平静ではいられない様子だが、
矢楚はひたすらにゴールのことだけを考えた。
FWには、ゴールへのシンプルな集中があればいい。
ピッチに立つかぎりは、矢楚の頭にあるのは、いかにボールにタッチしゴールを決めるかというイメージだけだ。
広香を失って心が荒れ狂った分、
FWに撤する矢楚には、精神の凪(なぎ)がある。