光の子
ふたり、無言で歩いた。
色とりどりの小さな花が咲く花壇の脇を。
保健室に着いたが、養護の先生は留守だった。
鍵もきちんとかかっている。
矢楚は小さくため息をついて広香に言った。
「待っとこ。それ、バイ菌入ると嫌だし」
矢楚は廊下にぺたんとあぐらをかくと、
自分の前の床をぺちぺちと叩いた。
「はい、ここに座る」
少しためらってから、広香は力なく座り込んだ。
とても疲れていたし、決まりも悪かった。
矢楚の顔が見れず、床に目を落とす。
「何が、どうなって、ああなったわけですか」
穏やかな声で矢楚が尋ねた。
「あの子たち弱い者いじめしてて……。
なんか、反抗したくなったの、急に」
「……そっか。広香、無茶するね〜」
「うんこみたい、って言っちゃった」
目を丸くして矢楚が聞いた。
「え、あいつらに?」
広香はうなずきながら、吹き出してしまう。
「囲まれたら頭が真っ白になって、口から出てたの、あんたたち、うんこみたい、って」
矢楚も、ぶぶぶっと吹き出した。
声を出してふたりで笑うと、朗らかな気持ちになった。