光の子
勝ったのは、矢楚だった。
追い抜くとき。
知也が、うそだろ、と小さく叫んで矢楚は吹き出しそうになった。
学食の玄関で勝ち誇ったように笑う矢楚の前で、
知也は肩で息をして、膝に手を置き前のめりだ。
「3秒早くスタートしたのに」
「狭いコートで戦ってるバスケ部とは、日頃の鍛え方が違いますよ」
「コートが狭いからこそ、走りっぱなしなんだよ、バカにすんなよ」
知也がそう言うと、矢楚は、はいはい、失礼しましたと言って笑った。
知也は体を起こして矢楚の前までくると、矢楚の肩に腕を掛けて歩きだす。
わざと肩に体重をかけてくる。
「知也、重い」
「鍛え方が違うんだろ?」