光の子



柴本亜希は、すぐに声に反応した。


髪を指で梳いて整えながら、ゆっくり顔を上げる。



印象的なきりりとした眉は、今は前髪がかかっている。


くちびるがふっくらして見えるのは、薄くグロスを塗っているから。


矢楚を見返す気だるげな目は、丁寧にカールしたまつげに縁取られていた。



更に磨きがかかっている。


友の心配を振り切ってここに座った小さな決意は、すぐにも挫かれた。



手に負える気がしない。



女の子は、男が『こうだ』と捉えていたイメージを、わずかの間にすり抜けてしまう。


柴本亜希も、広香も。



「藤川くん」



今更。
浚巡したところで何になる。




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