光の子


おかしくなって入院した母のことを、
広香は憎らしく思い始めていた。



住む権利もないあの家に、自分を置いていくなんて、と。




「ずるいよ。
苦しんでるのは、自分だけみたいに思って、心のぐちゃぐちゃを人にぶつけて……ずるい」



鼻を啜りながら、自分だって矢楚に行き場のない気持ちを話してるじゃない、

広香はそう思って情けなくなる。


矢楚は困った顔も見せず、ただ穏やかに、うん、そうだね、と相づちをうってくれた。


広香の母のことも、家で冷遇されていることも、矢楚は知らない。


知らない、ということ。何も聞かずに清らかな姿を見せてくれていること、


それが広香の救いだった。

矢楚は泣いている広香の頭をぽんぽん、と叩いてくれた。
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