光の子
「柴本さ」
オレを手に入れるためだけに、美鈴や親父に近づいたの?
はっきり聞きたい気もしたし、
目を閉じて考えないようにしたほうがいいとも思った。
踏ん切りがつかずに、別の質問をした。
ここに来たら、聞くつもりでいたこと。
「誕生日、いつ?」
「いいよ、そういうの。
汚い脅しで彼女の立場をもらったこと、ちゃんとわきまえてるし」
淡々と言って、頬づえをつく。
予鈴が鳴った。
教室に生徒が戻りだす。
矢楚は、左の手の甲を柴本亜希に突き出した。
「ここに、書いて。誕生日」
柴本亜希の瞳が、左右に揺れた。
また知也の忠告が頭で響く。
『今なら。
お前と広香は、ただ好きな者同士がちょっとすれ違ってしまっただけで。
いくらだって取り戻せる。でも柴本と付き合ったりしたら…。分かってるのか』
分かってるよ、知也。