光の子



9月16日



矢楚は手の甲に書かれた日付を見て、少しだけ気が楽になった。



これは烙印。

柴本亜希と歩き始めたことを、自分に自覚させるための。



戻れない道に踏み入るほうが、
二つに分かれた道の前で迷い立ち尽くすより楽だった。




「じゃあ、明日から?」




「休み明けでいい。
私も、きちんと終わらせないと」




矢楚は頷き、席につきだした生徒の流れに逆行して、教室を出た。




走らなければ、遅刻する。



慌てて廊下を走りだした矢楚は、地球儀などの教具を抱えて歩く男女とすれ違った。




あれは――。





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