光の子



すれ違いざまに、
その女子生徒の髪が、風にふわりと吹かれ、右の耳が見えた。



心の中を、風が吹き抜けていく。果実のような香気を広げて。



5メートルほど進んでから、矢楚は振り返った。



同時だった。彼女もまた、振り返ってこちらを見つめた。


それは、わずか3秒ほどだったが、魂には永遠の長さに思えた。



そして同時に、二人は前を向いた。




さよなら。

広香。




矢楚は、再び駆け出した。














< 343 / 524 >

この作品をシェア

pagetop