光の子



広香は、木綿子が知也をつかまえたことに安心して、速度を落とした。

二人の声だけが届く。




「おう、なんだよ、切羽詰まった顔して。
オレはチアには入部しないぞ」



「誰がエロおとこを勧誘するか」



「おまえな、男のスケベは健康の証だぞ」



「アホ…。
ちょっと、聞きたいことあるの」



「ああ?なんだ?」



やっと姿を現した広香を見て、知也の呑気な顔が引き締まった。



広香は乱れた呼吸に咳き込みそうになりながら、壁に寄り掛かる。



あいさつもできない広香に代わって、木綿子が言った。



「隣の校舎の三階から、知也が帰るのが見えたから。二人で追い掛けて来たの」



知也は、すぐいつもの涼しい顔つきになって広香に言った。



「広香、体力無さすぎ」







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