光の子
‥… ‥‥ ‥… ‥…
陶芸部は、三階の空き教室を利用している。
ここは窓から、青々とした芝が植え込まれた小さな中庭を見渡すことができる。
広香は、木綿子と知也に、好きなところに腰掛けてね、と告げると、
すべての窓を開け放って、部屋を風でいっぱいにした。
残暑の九月。
知也はネクタイを思いっきり緩めて、シャツの第二ボタンまで外している。
木綿子は、汗ばんだ後れ毛が首筋にしんなりとくっついていた。
「どれが、広香の作品?」
木綿子は、教室の後ろの棚に並べられた陶器をながめて尋ねた。
「一番右の、白いやつ」
「触ってもいいの?」
うなずいた広香をみて、木綿子は、白い陶器を手に取った。
ご飯茶わんのつもりでつくったものだった。
「温かみのある白だね」
木綿子はそう言って広香に微笑んだ。